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斉藤太一です
第12章 作戦
「おとーさ~ん!!」




メガネをはずして
汗を拭いていると

遠くから
しずくの声が聞こえた


急いで
メガネをかけ

その声の方に
視線を向けると



手を振りながら
走る
しずくが目に入った



「しずくちゃ~ん!」



僕が
しずくよりも
もっと大きく
手を振って見せると



しずくが



笑った




しずくが
笑うと



僕も



笑ってしまうんだ





「危ないから

歩いておいで~」




そう言っても

しずくは
止まらない




「平気~~っ」




だんだん
近づくしずくが


愛おしくて




分からないけど
なぜか
胸がいっぱいになる




その場に
しゃがみこんで

しずくの目線に
自分の目線を合わせると

しずくは
あっという間に
僕の目の前まで
走ってきた




「ハァ、ハァ、ハァ・・

おうち・・


から・・ハァ・・ハァ・・



ずっと

走って・・

きちゃった・・はぁ・・」





息を上げるしずくは
汗びっしょりで




「すごい汗だな

何か・・飲むかい?」




しずくの汗を
ハンカチで
拭いてやりながら

自動販売機を
探した



「しずく平気っ!

行こうっ!

おとーさん!」




逸る気持ちを
抑えられないのか

しずくは

僕を急かす




「う、うん

そ、そうだね・・行こうか


遅くなると
ママが
心配するかもしれないし」




「うんっ!!」




しずくの返事をきっかけに
僕は立ち上がり




「どっちかな?」




と、お弁当屋さんの方向を
しずくに尋ねると


しずくは



「こっち!」



と、指を差して
元気に答えた




「じゃあ

・・・行こうか。」




心の中で

よしっ

と、気合を入れ




僕は
お弁当屋の方向に
一歩、足を踏み出した





いよいよだ



そう心の中で
つぶやくと










小さな







小さな

しずくの手が





すっ……と




僕の手を



握った




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