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斉藤太一です
第6章 隅っこと隅っこで

あの日も

いつものように
君からメールがあって

僕は
急いで仕事を
片付けて帰宅したんだ




いつもなら


僕の階段を
かけあがる音を聞いて

ドアの前から
君は立ち上がり
廊下から顔をだして


「斉藤さん、遅い」


って言ってくれるはずなんだけど




その日


かすみは
ドアの前に
座ったまんまで・・・




「・・斉藤さん・・・」




力ない声を出したんだ




「どうしたの?

かすみちゃん
大丈夫?


す、すごく
顔色悪いよ

具合悪いの?



と、とりあえず
中に入って」





具合の悪そうな
君の手を握って

そっと
君を立たせて
鍵を開けたんだったね




ゆっくり・・


ゆっくり歩く君に合わせて




とにかく
手を握ったまま

僕も
ゆっくり

歩いたんだ






肩を

抱き寄せて
あげたかったけど


できなくて




おんぶだって

抱き上げることだって


してあげたかったけど





できなくて






ただ


手を握るだけしか




できなくて





「横になった方がいい」




「・・平気・・」




「具合悪いんだから
遠慮しちゃだめだよ

ほら

ここに・・・」





とにかく

君を



早く

ベットに寝かさなきゃ



そう

思ったんだ




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