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隠匿の令嬢
第6章 恥じらう乙女と卑猥な遊戯


 アッシュブラン邸の一階の隅にある、陽当たりのいい部屋は今はまださほど明るさはない。遠く東の空で、寝坊助の太陽がやっとこさ起き始め、その頭を面倒臭そうに出してきている。


 アリエッタはこの部屋をアトリエとして使わせてもらっており、レースのカーテンを閉めたまま部屋の片隅でイーゼルに立て掛けたキャンバスと向き合っていた。


 庭園ではキッシュたち庭師が忙しなく動き回り、敷き詰められた芝生に水をやり、萎んでしまった花を摘まみ、植木の刈り込みを完璧に仕上げたりしている。


 使用人たちも主人がいないからとサボることなく、埃を払って床を磨き上げ、キッチンでは料理の下ごしらえに追われている頃だろう。


 しかしアリエッタには人の気配は感じ取れてない。


 パレットに何色も乗せた絵の具から色を選び、筆に乗せ、長方形のキャンバスに重ねていく。


 レオの肖像画を描いているのだ。




 だが実のところ思うように進んでいない。レオから感じられる色彩は実に複雑で、日によって違って見えたりもして。


 彼という人を表現するには一枚の絵では到底しきれない……というのが、描いてみて再確認したことであった。





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