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隠匿の令嬢
第6章 恥じらう乙女と卑猥な遊戯


 キッシュは頬杖をついて嘆息する。呆れたような溜め息はそれでいて親愛さも孕んでる。


「無自覚ですか」


「無自覚って?」


 訊ねてみても答えないので、助けを求めナキラを見るも肩を竦めるだけ。やはりここでもきょとんとする。


「いやぁ、でも。ここ最近のアリエッタ様は本当に綺麗になられましたね」


 含みのある言い方は決してアリエッタを異性として言ったものではなく、親しみを込められたものであった。


 だが面と向かって『綺麗』などと言われ馴れてないアリエッタは頬を染める。


 背後に君臨する影に気付いたのは、二人をほのぼのとした面持ちで眺めていたナキラだけ。そのナキラが背後の人物を認め、表情を引き攣らせた。


 キッシュの頭に大きな手が落ちてくる。その瞬間キッシュの顔も引き攣った。


 アリエッタが彼──レオを見上げると、レオは腰を折ってキッシュに顔を寄せた。


「お前も成長したもんだな。女を口説けるようになるなんて」


 レオの顔はキッシュに向けられていて、アリエッタは風に靡く淡い月色の髪しか見えていない。


「やだなぁ、レオ様……。気配もなく人の背後に立たないででででっ!?」


「立たれて困ることでもあるのか?」


「あだだっ! 誤解です、誤解! あだぁっ!」


「キッシュ!?」


 悶絶を始めるキッシュの声にアリエッタはどうしたのかと立ち上がってキッシュへと駆け寄ると、レオはすっと手を離し、腰を伸ばした。






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