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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る



 ──心境の変化かどうかは解らないが、アリエッタの生活に変化は訪れていた。


 これまでニーナ以外とまともな会話を交わしてこなかったアリエッタであったが、ここ一ヶ月ばかり特定の人物と会話をする機会が増えた。


 淡い月色の髪と琥珀色の双眸、それに類い稀なる美貌を持つレオだ。


 突き返すような失礼な態度で鍵を返したその翌日。鍵は再びアリエッタの手元に舞い込んだ。


 寄宿舎に『忘れ物』として届けられたのだ。


 アリエッタは当然困り果てた。また返すためにレオと会わなければならない。レオを思い出すと、あの甘く痺れるような感覚がふいに頭をもたげ、アリエッタを悩ませる。


 アリエッタの中に巣食う罪悪感を押し退けるほどの甘美な感覚に当惑し、会うのが恐ろしくなる。


 今度は一週間悩み、結局返しに行く羽目になる。生真面目な性格が仇なしているのが、恨めしくて仕方ない。


 次こそ流されまい、と意気込んで行ったはいいが、その日レオは寄宿舎の門限までに現れなかった。






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