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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る


 60を数えあげたと同時に右手を上げる。なかなかいい勝負になっていると確信し、そっと瞼を押し上げた。


「どう? ピッタリだった?」


「アリエッタ……」


 期待をこめて言ったものの、レオはやれやれと首を振る。


「ピッタリどころか15秒もオーバーだ」


「嘘!? そんなはず……」


「負けは負けだな。ほら、こっちにおいで」


 負けた悔しさよりもこれから15秒もキスをされる羞恥と罪悪感に腰が重くなる。


 けれどレオの言うよう負けは負けであるし、生憎アリエッタは我が儘を通せるように人格が出来ていない。


 別の条件をとか拒否を押し通せないまま、おずおずとレオの横に腰かける。


「眼を閉じて」


「ッ──!」


 耳元で囁かれ、肩が跳ねた。


「唇には……しないでね」


 緊張でドキドキと胸が騒ぎはじめるのに必死で堪え、アリエッタは念を押す。


「ああ、約束は守る」


 アリエッタはひとつ息をつくと、意を決して痛いくらい強く瞼を閉じた。







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