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第10章 【微熱への処方箋】
*****

日曜日の真夜中。
葵専用1.5Lオレンジジュースの残量が減っていることが発覚し、ライヴ終わりの真央は葵に拉致られた。
私の部屋に担ぎ込まれた真央は改良を重ねた改造スタンガンの餌食になる。
更には私をライヴに誘ったことも咎められ、伸びたままパンツ一丁で亀甲縛りの罰を受けた。
目を覚まして泣きじゃくる真央に、葵は微笑みながらチーズリゾットを与える。

「美味しい、美味しい‥」

泣きながら食べる雛鳥の姿に胸が痛んだ。
真央のすすり泣きと咀嚼の音を聞きながら私は、
《蜜蜂さんごめんなさい。》
《葵君の許可無く安田三兄弟を部屋には入れません。》
《盗み食いは心が貧しいひとのすることです。》
と正座で写経した。

私に裸を見られたことが真央はよっぽどショックだったらしい。

「もうお婿さんにいけない…」

と泣き濡れる。亀甲縛りを解いてやり、バター飴を与えた。
もらい泣きした。

時計が深夜3時を回り、葵の澄んだ瞳がギラついてきた頃、おもむろに葵は月の輪熊の着ぐるみに着替え、真顔で私に蜜蜂の着ぐるみ、真央に体操服を着ることを強要した。
着ぐるみは夏仕様の吸水性の良いタオル地だった。
月の輪熊の着ぐるみは葵の身体には到底小さく、手足をにゅっと突き出した美しいかんばせの大男はいつもにも増して様子がおかしい仕上がり。
真央は体操服姿が怖いくらいに似合っている。
平成生まれって恐ろしいとゾッとした。

月の輪熊、蜜蜂、体操服真央(白い靴下着用)は皆で仲良く赤白帽を被り、無言で七並べをした。
色んな意味で汗が止まらないため、室内の空調は低く設定された。
無言の七並べ会は延々と続く。
エンドレス・サマーだ。

「‥夏場に着ぐるみは不適切…」

至極真っ当な呟きをこぼし、月の輪熊の着ぐるみを脱ぎ捨てた葵。
これでオシオキも終わりかと体操服真央と指を絡ませホッとしていたら、パンツ一丁葵が赤白帽をウルト○マン仕様に変更し、猛烈な勢いで体操服真央の身体で大玉転がしを始めた。
地獄だと思った。
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