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第12章 ひ と り

熱い、唇。甘い吐息。優しい指先。

ずっと一緒にいた。
なんでも知ってると思ってた。
好きな食べ物も、苦手な教科も。
癖だって、習慣だって、知ってたのに。

…初めて知った、幼馴染の熱。
あの甘さは、ズルい。


荒い呼吸。力強い指先。低いかすれた声。

無口な彼。クールだって、有名だった。
鍛えられた逆三角形の身体は、
自分を軽く持ち上げ包んだ。

わたしがみた彼は、みんなの知らない彼。
わたしだけがみているの？