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浮気断定社
第10章 依頼人 高橋 美樹
洋輔は大きなビルを見上げていた。

ー瑠璃、頑張ったな。
 こんな立派な会社に入るなんてたいしたもんだ。

 しかし...
 瑠璃、お前はいったいどんな星の下に生まれたんだ。
 あの最低な生活から救いだしてやったのにまた自ら地獄の縁に近づくような真似しやがって。

洋輔は競馬新聞を広げ瑠璃が退社してくるのを待った。

ぞろぞろとビルから吐き出される人混みのなからから瑠璃を見逃さないように注意深く目を向けていた。
 しばらくすると瑠璃とおぼしき女性が出てきたがその様子に洋輔は目を疑った。
 顔からは笑顔が消え目は一点を見つめたまま。なんとか正気を保っているがそれは会社にいるからであろう。

洋輔が一歩足を踏み出そうとしたとき

「瑠璃」

声をかけてきた男がいた。

瑠璃はその声が聞こえていないのか歩き続けている。

「瑠璃、瑠璃待て」

男は瑠璃の肩を掴んだ。

瑠璃はギョットして振り向いたが、男の顔を認めて少し表情が緩んだ。


 
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