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氷の華~恋は駆け落ちから始まって~
第3章 幻の村
 まさに森の海である。今、天幕が建っている場所は広場と呼べるほどの規模で、樹は見当たらない。年数を経てはいるが、明らかに人の手によって切り取られた痕跡―切り株が随所に見られた。
 天幕の側に一本だけ梅の樹が立っているのに気づき、サヨンは近寄った。
 早咲きの梅の花だ。白い小さな花は可憐で、こんな見る人とておらぬ山奥でひっそりと咲く花がいじらしく思える。そっと鼻を近づけると、ほのかな香りが鼻腔をくすぐった。
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