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目が覚めたら。
第5章 変態王子が暴走しました。
 

「しーちゃん……僕に溺れちゃえ」


 それを見透かしているように、ナツが掠れた声で誘惑する。

 むしろあたしの理性を壊したいかのような、ナツの執拗な攻め。


「僕しか考えられない体になっちゃえ」


 ナツ――。

 どうして泣きそうな声になっているの?


「しーちゃんが体を捧げた男の記憶なんて、消し去っちゃえ」


 誰と比較しているの?



「僕は……こんなにしーちゃんが好きなのに。それなのに……なんで僕だけじゃ駄目なのかなぁ? 僕だけが……しーちゃんの"絶対"になりたいのに」


 ああ、この子の切ない声に、胸がきゅうと締めつけられる。

 昔と変わらずこんなあたしの愛をせがむ可愛い子を、安心させるように濃厚に愛したくなる。


 どくん。



 "ふふふ。食べる? 食べちゃう?"


 違う、餌としてではなく。



 こんなこと、されているのに。


 なぜあたしはナツを嫌えないのだろう。

 なぜナツを拒めきれないのだろう。


「しーちゃん……」


 ナツ――。

 迷い子のような声を出さないでよ。

 どうしていいか、あたしも途方に暮れてしまうよ。


 あたしの心には女性的で感傷的なものを与えるナツは、身体には男性的で現実的にいたぶってくる。

 その二面性にくらくらしながら、あたしはなされるがまま、ナツの刺激に悶えるだけの哀れな子羊。

 あたしの淫らな蜜を吸うショーツは、濡れてよれた細い紐となり、それを操るナツは、熱くひくつくあたしの敏感な部分を集中的に摩擦してくる。

 ショーツの呪縛がない手でナツを止めに掛かるが、そこで強い快感を与えられれば口を塞ぐ手が必要になり、切迫性の優先順位を思えば、仕方なく口の元に片手を置くしかない。


 困りまくるあたしの反応を見て、ナツの機嫌が上方になってくる。

「しーちゃんやらしい。ひとりでイケナイ遊びしているみたい。ふふふ、濡れ濡れだから滑りがいいね」


 弾んだナツの声。

 機嫌がよくなってなにより。

 だけどその分、あたしが意地悪いナツの攻めに泣きたい心地になってくる。


 兄が鬼畜なら、弟はSか。

 親はあんなに平凡なのに、どうして兄弟は普通じゃないのだろう。


 あたしが受ける快感の具合はナツの導き次第。

 あたしは身を震わせながら、必死に手を噛み続けた。
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