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目が覚めたら。
第2章 とんでもないことになってました。

「ま、このアホタレはいつも曲がった方向に一途だからな。目が覚めれば相手が逃げるという、挿入時並みの痛みを味わいたくないために、少しでも男を悦ばせようと練習したんだろう」


 さすがは、ハル兄。あたしのことをわかってらっしゃる。

 だがそんなハル兄の目も、弧を描く口元とは違って笑っていない。


「……なぁ、シズ。俺様のモノが、お前が12年前……近所の八百屋から房単位で何度も買い占めた、あんなバナナ如きの小ささとは思ってねぇよな?」


 ……さすがは、ハル兄。その情報も"俺様ネットワーク"とやらですか?
 
 あのバナナ、凄く大きかったのに……あれ以上なんですか?


 思わず視線を注いでしまった、ハル兄の股間。



「僕のだってそうだ!! 僕のを見てよ!?」

「チャックに手をかけるな、見せなくてもいい!!」


 どれだけご自慢のモノをお持ちなんだよ、この兄弟。

 自慢されても困るんだよ、あたしは!!


 だけどこの兄弟を相手から却下すれば、あたしは……。


 ぞっとした。


「ねぇ。あたしの体は、治るものなの?」


 するとハル兄が僅かに目を細めた。


「あたしは生涯、男を"食事"として生きていかないと駄目なの?」


 ほろりと涙が零れた。隠そうとすれば、ますます涙が溢れる。


 12年間眠って、目覚めたらアラサーで。

 そして告げられたのは、あまりに非常識な現実。


 あたしがなにをした?

 そんなに好きな人に処女を捧げたのが、悪いことだったのか。



「……だから俺が、医者になっただろう?」


 確実なことを言えないハル兄が、困ったように笑いながら頭を撫でる。


「……僕は、しーちゃんが好きだから、"食事"されても嬉しいよ?」


 ハルが泣きそうな声であたしを抱きしめた。


「愛だと思えばいいじゃない。少なくとも僕はそう思っている。生涯、僕だけを使ってよ。僕、しーちゃんをおばさんのように太らせてあげる。一生懸命、しーちゃんに精液あげるから。僕、若いから何度も抜けるよ?」


 言葉はやはり変態的だけれど。なんだかナツの方が切実そうで、鼻の奥がつんとしながらも笑えてしまった。


 変態王子様を食い物に出来る女なんて、きっとこの世であたしひとり。

 そう思ったら、泣きながら……笑いが止まらなくなった。
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