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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 

 待て待て。

 おばさんが口にしたのは、"もしも"の"たとえば"の話であって。


 ハル兄が言ったのはそういう意味とは限らないはずで。

 ……だったらどういう意味だったのだろう?


 俗に言う、信じてはいけないという"ピロートーク"?

 そんなことを、ハル兄は言うタイプか?

 どこまで、甘々な恋人の演技が続いていた?


――……まだ、目覚める時じゃねぇ。


 目覚めの時、ハル兄がなにかをする気なのはわかった。

 いつ目覚めるのか、なにをするのかはわからないなりにも。

 ……それは多分、あたしに関係することで。


 ぶわっ。


 開いた毛穴から汗が噴き出た気がする。


「あらあら、怖がらせちゃった? ごめんなさいね」


 おばさんはくすくすと笑った。


「静流ちゃん、正直なところ……奈都や波瑠をどう思う? 嫌いじゃないという曖昧な表現抜きにして。12年後のあの子達に、昔と違う感情はない?」


 嫌いじゃないという表現は、確かに曖昧だ。

 曖昧さは、逃げているということ。


 あたしは深呼吸をした。



「愛おしいという気持ちが凄く強いです。だけど現段階、あたしはどちらの方がという差別をつけたくないです。どちらも愛おしい。どちらも胸を締め付けるほどに」


「ならば、愛は育っているのね?」


「おばさん、正直あたしは愛がどういうものかわからないんです。過去彼氏はいましたが、ずっと続くと信じられる前にあたしはフラれたと思っていましたから。少しでも長くを望み、やはり駄目で……ヤケになって意固地に、恋に恋しようとしていたような気がします。

だからなにが恋愛感情なのか、あたしにはわからない。だけど、あのふたりは誰よりも好きです。あのふたりだから、あたしは落ち着いて12年後を過ごしていられるんです。他の男では、きっとこんな安心感も……そしてドキドキ感もなかった」


 それが正直な気持ち。
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