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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2


――シズ、待ってたんだぞ。ほら、お袋さんからピアノの稽古セット。


 この人だかりの中、注目を浴びたあたしではあったが、ハル兄に関してはもう慣れっこだ。正直その時は、家に戻らずともまっすぐ教室に行けるということに素直に喜んだ。

 この通学路からは、家に戻るより教室に行く方が近かったからだ。


 ママが作ってくれたピンク色のネコの絵がついたカバンを受け取り、笑顔で大声でありがとうと口に出して、深く頭を下げた。

 感謝を体現して、ハル兄に背を向けて。

 さあスキップでもしながら余裕の時間帯でいざ教室に……としようとしたあたしの体が、突如ふわりと宙に浮いたのだ。


――教室まで送る。乗れ。

――はああああ!?


 不服申し立てをしたのはヤンキー女。

 見るからに般若の面相であたしを睨む。


――なんでそのガキはよくて私は駄目なの!?


 またいつもの痴話喧嘩に巻き込まれてなるものかと、そこから飛び降りて逃走を試みるのだが、何度も何度もハル兄に襟首摘ままれて、乗せられる。

 その間、ヤンキー女はギャーギャーだというのに、ハル兄はそんな女をいつものように放置して、バイクをふかしはじめる。


――あたしここからすぐそこだから歩いて行く。

――いいんだよ、俺様が送るって言ってるだろ!?

――いや、だからすぐそこなの。歩きたい、歩いて行きたい。

――我が儘娘には、"ぐりんぐりん"だぞ!!
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