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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 


 アイシテル……?



 ハル兄の顔が真剣だったから――。

 だから一瞬、ハル兄から告白されたと思って、心拍数が上がった。


 だけど――わかっている。



 ハル兄は、本気でそんなこと言うひとじゃないこと。

 だって昔あたし聞いたもの。


 あまりにハル兄に食い散らされて、無残に捨てられる女達が可哀想で、仮にも愛した女ならもっと優しくしろと言った時、ハル兄は言ったんだ。


――愛した? 俺がか? あんな女相手に俺様が本気になるわけねぇだろうが。言っておくが、俺は今まで告ったことはねぇ。全員が全員、ちょっと寝たからって、勝手に愛と勘違いして俺の女面して束縛してくる。俺の方が被害甚大じゃねえかよ。


 耳をほじりながら、さも面倒臭そうに。



――覚えておけ、シズ。俺が本気になる女は、手を出したくても手を出せねぇ……俺自身、どう誘えばいいのかわからなくなる、そんな魔性の女だ。そいつ以外、俺にとって女は性欲処理の道具だ。


 こいつは最低のクズ男だ。ダメダメだ。

 この男の性格は、死んでも直らないと確信したんだ。


 ハル兄にそんな魔性の女が現れてのぼせている様子はない。

 多分、この12年の間も。


 お部屋でのお誘いを受けたあたしが、魔性の女であるわけがない。


 ハル兄の性欲処理対象よりは少しはマシな扱いにしてくれているとは思うけれど、ここで恋愛対象だと本気だと自惚れたら、あたしは末代までハル兄に笑われる。


 ねぇ、おばさま。

 やっぱりハル兄は、あたしをどうこうとは考えていないように思うよ。


 あたしと"恋人ごっこ"を敢行しようとするのは、そこまでしなければならないほどに精神的に追いつめられているからなだけ。

 今が特殊な状況だから――。


 本気になれる女が現れるまで、注がれるすべての愛を放棄した女の敵が、ご自慢の宝刀の回復のために女の愛を求めるほど、深刻なEDになってしまったのは、身から出た錆。今まで散々食い散らした女達の怨恨だとも思えなくもないけれど。


 だけど、あんなに死にそうになるハル兄を見るのはあたしは嫌だから。


 ハル兄がここで愛を持ち出した理由はひとつだ。

 ハル兄は早く部屋に戻って、EDを完全に治癒させたいんだ。


 だから今から気分を盛り上げようとしているに違いない。
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