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目が覚めたら。
第8章 鬼畜帝王が暴走しました。2
 


 あたしの頭上で頬ずりを続けるハル兄。

 まるで喘いでいるような切なげな吐息を零すと、ぎゅっと強くあたしを抱きしめながら、もぞもぞと首に顔を埋めてくる。


 露わになっているあたしの肩にも頬ずりをして、時折首筋にちゅっちゅと啄む様なキスをしてくる。



「ん……」


 夜の静寂(しじま)を破る、ハル兄の悩ましげな声をなんとかして。


 ハル兄の衣擦れの音。

 ハル兄のリップ音。


 トロトロな頭が心臓が、ハル兄でパンクしそうだ。



 あたしはきゅっとスカートを掴んだ。


「お前……なに緊張してんだよ……」


 熱っぽい声が微風のように耳もとを掠れた。

 ぞくりとして、乱れた息遣いになりながら答える。


「だって……ハル兄が、ハル兄じゃないみたいで……」

「ん……? どんな俺?」


 甘ったるくそう言うと、耳に舌を這わせてくる。

 ちゅくりと、音をたてた耳の愛撫が始まる。


「……絶対、ん……馬鹿に、されるから、ぁ……言わない」

「馬鹿にしねぇから言えよ」


 囁くような声は、誘うように甘く。

 ぬちゃぬちゃ音を響かせて、耳朶を甘噛みされる。


「言ってみろよ……。なぁ……?」


 熱に浮かされたような声を押し込むように、耳の穴にぬるりと舌が捻りこまれ、あたしは身を捩らせながら、絞るような声で言った。


「そ、その……あたしを、好きで仕方が無い……みたいな……」


 ハル兄の動きが止まった。

 言葉に出して後悔する。ああ、やっぱりあたしは勘違いしていたのだと。


「そ、そこまで固まらなくたっていいでしょ? あたしハル兄みたいに、こういうの慣れてないし、もぅ、だから言いたくなかったのに」


 むくれて俯けば、ハル兄が頬に唇を寄せた。


「俺だってお前以外にこんなこと、したこともしようとも思ったこともねぇよ。んなことより、なぁ……。言葉では通じねぇのに、これなら通じるわけ?」

「え?」


 再び始まる、ハル兄のキスの嵐。

 頬に耳に首に。


「けど、こんな程度で俺の愛のすべては語れねぇぞ?」


 否定の言葉を寄越さなかったハル兄は、むしろ肯定するように笑う。


「体で伝えてやるよ、俺の愛。だからとことん……俺から愛される幸せに酔え」

 
 耳に囁かれた言葉に、あたしはぞくりとした興奮を覚えた。
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