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目が覚めたら。
第9章 変態王子様の奮闘
 
「あのふたりがブチ切れる様、知ってるのかあんた!?」


 なぜか涙目のクソメガネ。


「俺、一度切れたナツを止めに入って……全治一ヶ月だったんだぞ!? そこに波瑠さんまで切れてみろ、兄弟揃って暴れたら東京崩壊だぞ!?」


 あたしの脳裏に、なぜか東京で大暴れしているキングコングとゴジラが思い浮かんだ。
 


 引き攣りすぎてうまく笑えない。


 マジ切れしてないよね、ナツもハル兄も。


 ちょっとうっかり、電話の電源が入ってなかっただけだし。

 そう、うっかり。

 うっかりなんだよ、今まで切っていたの忘れているほどに。

 そういう可愛いうっかり、人間なら皆経験あるでしょう?


「ナ、ナツはほら、可愛い女の子に夢中だし……、あたしが居ないことにも気づいていないかもしれないし……」

「気づかなくても、波瑠さんがナツに電話するだろう!?」

「ハル兄は忙しいし、ナツが電話中なら……」

「忙しくても、あんたの電話に出たんだろう!? あんたに関しては特別なんだよ、波瑠さんは!! ナツの応答がなければ、あの人ここに乗り込んでくるぞ!? この大学、乱闘騒ぎになるかもしれないぞ!?」


 ひぃぃぃぃっ!!



「じゃ、電話……まずはナツに電話……」


 しかし繋がらない。

 電話中だ。


「俺も参戦してやる。……ナツ、なに電話して……。ん……まさか、ナツの"電話中"って……」

「ゴジラが駄目なら、キングコングの方に……。ええと、駄目だ。手が震えて、ハル兄の電話番号が……」

「発信履歴から拾えって」

「あ、うん。そうか」



 そんな時だ。


 ピンポンパンポン♪


 館内放送がかかったのは。



『佐伯奈都から緊急呼び出し致します。葉山静流さん、葉山静流さん。大至急、医務室までお越し下さい。繰り返します、勝手にいなくなった葉山静流さん。波瑠兄と電話してからフルシカトしている葉山静流さん。問答無用でただちに医務室に……来い』


 最後、最後の低音はなに!?


「……ナツの声だ。波瑠さんから連絡受けているようだな。かなりキてるぞ」

「ど、どうしよう? 逃げる……逃げたい。あとは任せた!!」

「任せるな!! ここで逃げれば暴れるぞ、あいつ」


 ゴォォォォォ。


 脳裏でゴジラが火を吹いた。


 ひぇぇぇぇぇっ!!

 
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