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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。
 

 
「キヒヒヒヒヒ。おんな、女っ!!」


 ぎらついた血走る眼で、動物じみた歓声。

 完全にびびったあたしの隙をついて、およそジイサンらしからぬ元気さで飛び跳ねるようにして、布団を剥いだあたしの体の上に馬乗りになる。


「やだ、どけっ……どけったらっ!!」


 病衣に手をかけて開こうとする変態に、あたしは思いきり抵抗する。しかしこのジイサン、身軽すぎた。それとも組み敷いた女の抵抗というのは、一辺倒なものなのか。

 すべて躱され、それでなくとも貧血気味で動きが鈍いあたしの体力だけが無駄に消耗していく――。


 声を上げようとも防音の上、無人。

 さらには外は大雨で悲鳴は届かず。

 いつもいるはずの、キレたら恐い元総長も不在という不幸ばかりが重なった中、痴漢撃退方法として男の股間を蹴り上げればいいと思い浮かぶけれど、視界の中でびょこびょこと元気よく動くグロテスクなそれに、本能的に関わり合いたくないと……忌避したい心が躊躇させるのだ。

 なんでこんな変態が紛れ込んでいるんだよ。

 なんで!!?


 不意に思い浮かんだのはナツとハル兄の会話。


――ああ、なんでも強姦魔が護送車から逃げ出して、通行人の財布を奪い、この病院に逃げ込んだとタレコミがあったみたいだ。この病棟はセキュリティーがしっかりしているから大丈夫。


 多分、その強姦魔だろう。もうその目は完全にイッちゃっており、組み敷き方が常習犯だと言うことを物語っている。


 なにが大丈夫なんだ、ハル兄っ!!

 セキュリティくぐり抜けて、変態強姦魔が来たじゃないかっ!!


「やられて……たまるかっ!!」


 手にしたのは、枕元にあった牛女。

 総集編二冊を闇雲に振り回していたら、それが変態の頭にクリーンヒット。男は呻き声を上げてベットから転げ落ちた。


「ナイス、恐怖の牛女っ!!」


 今だ、逃げよう!!


 殆ど下着姿に病衣を羽織った恰好のままで、ベッドから飛び降りドアから逃げようとしたあたし。しかしあたしの腕を強姦魔が掴み、ぶすりとなにかを刺した。


 冷たい液体が体内入り込む感触。

 恐怖に駆られたあたしはそのワゴンを強姦魔に向けてひっくり返した。


 強姦魔の手から離れた注射器が、床に落ちてばりんと音をたてて割れる。

 なに、一体なんの注射をされたの!?
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