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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。
 


 ナツがいれば。

 ナツがいればきっと落ち着けたのかも知れない。

 ナツと沖縄に行けばよかったのかもしれない。


 ナツと弄り合ったあの蜜時を思うだけで、体が火照る。

 あの甘美な精液を味わった至高の瞬間を思い出すだけで、喉の奥がひりひりして、ナツのを渇望する。


 だけどナツはここにはおらず、いるのは……その存在からして、ナツ同様の美味に思えて仕方が無いその兄で。


 ナツの代わりにあたしを満たすことが出来るのは、ハル兄しかいない。

 それはあたしの本能が認めている。


 だめなの?

 どんなに求めても、ハル兄を味わうことは許されないことなの?



「ハル兄。射精すれば命がけになる年だと、言われたことは忘れていないけど、命がけにならない程度でいいから、帝王様の威信をかけて……」


 欲しい、欲しい、欲しい。

 "食べたい、食べたい、食べたい"


 ちょっとでもいいから味見させて。

 "どうしようもなく、食べたくて仕方が無いの"



「あ゛~っ!? 誰が年だ!?」

「す、すみません~っ」


 ……念のためにもう一度言っておきたい。

 あたしの体は欲情の昂ぶりの最中にあり、ハル兄を怒らせまくりたいわけでも、こんな主従ごっこをしたいわけではないのだ。ちなみに学習能力がないわけでもない。ただお腹が空いただけのひ弱な女の子(アラサーだけど)。

 
 誘ってもハル兄の態度は軟化しない。

 はだけたあたしの体を見ているのに、ハル兄は、おいしそうなその体をあたしにはくれない。

 ……座右の銘は"据え膳食わぬは男の恥"だって、ひらがなもろくに書けない幼稚園児の頃から教え込んでいたくせに。

 女ならスエゼンにならないといけないと言われ続けたから、小学三年生での「将来なりたいもの」のグループ分けで、"スエゼングループ"を大いに強調したあたしは、先生困らせた挙げ句に放置プレイくらったのに。

 通信簿の生活態度欄に「もっと協調性を持ちましょう」とダメだし食らったのに。


 つまり幾らあたしが女としてハル兄を求めようと、ハル兄は欲情したあたしなど、いつも通りの近所のガキ同然で。


 ハル兄には、据え膳にすらならない……女以下。


 ムカムカする。キリキリする。


 悔しい――っ!
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