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目が覚めたら。
第4章 鬼畜帝王は×××でした。
 
「ハル兄……」


 あたしは四つん這い状態で、ハル兄の足を掴んで乞うた。


「欲しい……の、ハル兄の……欲しいの」


 欲しくて欲しくて狂いそうで。



「ハル兄だから、今ここで欲しいの――っ」



 涙を流しながらハル兄を見上げた。

 ハル兄がびくっと体を震わせたのが見えたが、落とされた言葉は非情だった。



「駄目だ」


「ハル兄……お願い。お願いだからここで……」


「駄目だ」


「ハル兄、あたし変になる。狂いそうなの。お願い、ハル兄……っ」


 あたしの体が突如持ち上がり、肩に担がれた。


「……変態クソジジイと交わったところでなんて悪趣味すぎんだよ、お前。場所くらい選びやがれ」


「……え?」


 寄越された流し目は捕食の帝王。


「いいか、後悔するなよ。あんなに床に垂らすまで、お前は俺を求めたんだ。忘れるなよ? "ハル兄だから"って言ったこと。お前はナツの代わりではない俺を求めたんだからな。

担当医である俺は、そこまで泣き叫ぶお前の異常事態を見過ごすことが出来ず、これから緊急的に"応急処置"を施す。

……言っておくが、俺の治療は優しくねぇぞ」


 担当医らしからぬぎらぎらとした欲情を隠そうともせず、彼は接触にて体を捩らせるあたしを、妖艶な面差しで見る。


 ハル兄のオスの香りが鼻孔一杯に拡がり、くらくらする。


 噎せ返りそう――。

 ハル兄の、迸るような野生の艶に。


 体が期待に、じんじん甘く疼く。


「お前が……焚きつけたんだからな。折角、俺が"現実逃避"グッズで我慢してやろうとしてたのに……」


 一瞬――。

 憂いある漆黒の瞳によぎったのはなんだったのか。



「……愛だと勘違いすんなよ、シズ」


 
 ああ、そんなことどうでもいい。


 ハル兄があたしを抱いてくれるなら。

 ハル兄がその気になってくれたのなら。


 愛情なんてなくてもいい。

 治療だけでいい――。

 

 荒々しく……あたしを抱いてくれれば。



「俺のものに手を出した……あの忌まわしいクソジジイの痕跡なんて、一瞬で消してやる。

――ナツではない、この俺がな」



 帝王様が不敵に笑った――。




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