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可愛いヒモの育て方。
第9章 夢
店長の眉間に皺が寄る。
「いえ、そうじゃないんですけど……。なんか女の人の声で、君島麻人いますか? って」
「君島? なんだよ、君島の彼女か? 私用で店に電話すんなって伝えとけ」
冗談半分に笑いながら、店長が言う。
私は真顔で返した。
「そういう感じでもなかったから、報告したんです。その人、様子おかしかったんですよね。不気味なくらいずっと無言で、やっと一言君島麻人いますかって喋ってきたんで名前を伺ったら、切られてしまって……」
一件、思い当たることがあった。
「ストーカー……とかじゃないですよね? 藤森(ふじもり)さんの時みたいな」
もう多分、二年以上前の話だ。
その頃バイトで働いていた子の中に、藤森という名前の女子高生がいた。うちの店では、若い女の子はホールで雇うことが多い。その子もホールだった。
藤森さんはかなり外見が可愛いくおとなしそうな子で、常連さんに人気だった反面、たちの悪い客に絡まれることも多かった。ある時、中年くらいのおじさんに、メールアドレスと電話番号の書かれた紙をもらったと、相談された。