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可愛いヒモの育て方。
第19章 キズ
「さっき店長から電話きて、聞いた。お母さん……、大丈夫?」
「…………」
沈黙。ほんの二、三秒の沈黙が、待ちきれないくらいに長く感じた。
「……はい」
「本当に?」
病院に運ばれたのに? たいしたことじゃないのなら、麻人のバイト先に連絡がくるはずがない。
「はい。友梨香さんが、いろいろ気にするほどのことではないんで、大丈夫ですよー」
「……なんで飲みって嘘ついたの?」
「んー、なんとなく?」
「意味わかんない……」
おさまりかけた怒りが、またふつふつと湧いてくる。
「なんで麻人は、いっつもそうやってはぐらかそうとするの? 心配されんのうざい? 家のこともお母さんのことも、聞かれるの面倒くさい?」
携帯を持つ手がわずかに震えた。口からするすると溢れ出す言葉を、どうやったって止められない。
「友梨香さん?」
「麻人ずるいよ! 私のことはずけずけ聞いてくるくせに! マサルのことも小説のことも、全部強引に聞いてきたくせに、自分のことはなんにも話してくれない! 私だって、麻人がいつも私の話をきいてくれるみたいに、麻人のこと聞いてあげたいのに!」