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石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第11章 第三話・弐
     【弐】
 
 その夜半のことである。花ふくの二階の一室で、お民と源治は向かい合っていた。
 結局、その日、お民は徳平店に戻らなかった。いつものように店じまいをする夜四ツ少し前、花ふくに迎えにきた源治に、お民はすべてを伝えた。本当は龍之助が石澤家の侍たちに連れ去られた直後に仕事場まで知らせようかと思ったのだけれど、それは止めた。
 今、源治に急を知らせても、何も事態が変わるわけでもない。かえって龍之助の身を案じた源治が他のことに気を取られて足場から落ちでもしたら、一大事だ。
 案の定、源治は
―何でもっと早くに知らせなかったんでえ。
 と、お民を烈しく詰(なじ)った。
 水戸部たちが龍之助を連れにきたのも花ふくだったので、もし何か連絡があれば、こちらにいた方が良いのではないか。
 岩次がそう言い、その夜は花ふくで厄介になることにしたのだ。
―お民ちゃん、源さん。済まねぇな。俺ァ、龍坊がみすみす連れてかれるのを止めることができなかった。許してくんな。
 岩次はまるで龍之助が連れ去られたことが我が責任のように言い、涙ぐんで肩を落としていた。
 だが、岩次やおしまには何の拘わりもないことだ。むしろ、自分たち母子のために、何の関係もない花ふくを巻き込んでしまって、申し訳ないと思っているお民である。
 二人とも、岩次が作ってくれた晩飯も全く喉を通らなかった。世継として迎え入れるのだと言っていた水戸部の言葉から、龍之助の身に何らかの危険が及んでいるとは考えがたいが、二歳の襁褓も取れてはおらぬ幼子が突如として親から引き離され、見も知らぬ屋敷でどのように心細く過ごしているのかと考えただけで、不安で胸が張り裂けそうになる。
 二人はかれこれ一刻余りもの間、押し黙ったまま座り込んでいた。
 松之助は、おしまが預かってくれている。
 あれから石澤家からは何の連絡もない。
 当然といえば当然のことだが、これで石澤家が龍之助の身柄をこちらに返す気は一切ないのだと向こうの思惑をまざまざと思い知らされたようだ。
「済みません。私がついていながら、こんなことになっちまって」
 このまま黙ったままでいれば、狭い部屋に満ちた静寂に押し潰されてしまいそうで。
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