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私達が人間を辞めた日
第6章 愛しい人

「助けて...涼ちゃん...」

ぽつり...最愛の夫である咲枝涼(さきえだ りょう)の名前を呼ぶ...
夫といっても二週間前に挙式をあげたばかり...簡単に言えば新婚だ。
私達は物心ついた頃からずっと一緒だった。三人の幼なじみと同じマンションで育ち、お互い喧嘩したりすれ違ったりしながらも大学まで同じ学校を選んだ。
もう一人の幼なじみは内気な私と違って活発で明るい女の子。彼女が男より仕事を選んでくれた事は私にとって幸運だった。彼女は今も大事な友人だ...
距離が近すぎる故に随分と遠回りもしたが、子供の頃から夢が叶い...涼と夫婦になれたのだ。

新婚生活も随分と落ち着いた私達は予定通りに新婚旅行に出掛けた。
私の希望で自然豊かな場所を選び、少しの移動にも手を繋ぎ...夜は甘く触れ合い...物静かな場所で二人は将来設計を話す。
子供の名前はなんにしよう...子供は何人欲しい...三年後までにはマイホームを買おう...

私達は手を繋いだまま浮かれていたのだろう...
川のせせらぎと小鳥の囀りに隠された男達の足音...気が付けば二人同時に口に布を当てられ...意識を失った。
目を覚ませば全裸で檻の中...「11」と記された首輪を着けた私は、作業服の男におぞましい説明を受けた。
何度尋ねても涼の安否は教えてくれない...

「涼ちゃん...助けて...」

私の願いは虚しく鉄格子の隙間から漏れ...誰にも届く事無く大気と同化する...
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