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喘ぐなら、彼の腕の中で
第9章 胃薬と酔い止め


「沙月」
「……!ん、ん…っ」


キスの合間に、莉央が何度も私の名前を口にするから
低い声に反応して、体がゾクゾクしてしまう。



“ 本当に好きな相手と繋がってほしいの ”



私がそう告げてから、何も言われないままキスをされている。


「……っ」


やめて。
勘違いしてしまう。

好きな人はいないって、キッパリ言われたんだ。
相手が何を思っていてもどうでもいいって。

境界線を引かれたんだから、このキスに意味はない。

ただの気まぐれか、性欲の捌け口だ。


「……っ 莉央……」


名前以外何も言葉にできないまま、彼の背中に手を回した。

優しい口づけに変わったけど
反対に私の心は苦しくなっていく。


莉央に心から愛する人が出来てほしいと、ついさっき願ったばかりなのに

こんなに強く抱きしめられていても、莉央の心に私はいない



─── それが

ただただ、悲しかった。



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