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喘ぐなら、彼の腕の中で
第10章 一発KO


歩きだそうとした莉央が、振り返った。


「何固まってんの」

「……足が動かないの」

「はぁ?なんだそれ。
俺外出するから先行くぜ」


放心する私を残して、莉央はエレベーターに乗ってしまった。
急に風が強く舞って、私の体を通り抜ける。


「………」


流されてない?

騙されてない?

だって、3日前に芹澤さんを想って泣いたばかりじゃない。

次の恋に進むまでの、寂しさの穴埋めだって納得したじゃない。



……次に好きになる人は

ハートが熱くて、真っ直ぐで

優しくて、芯のある強い男……



「……やられた」



もう、何を言い訳しても無駄だわ。

だって、莉央がさっき現れた時点で

高い波に呑みこまれて、一発でKOされてるんだもの。



波浪警報、発令。

だけど、もう遅い。




─── 好き

私、莉央が好き ───





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