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喘ぐなら、彼の腕の中で
第6章 ベストを尽くせ


「沙月? どうかした?」


無言のままの私の顔を、亜美が覗き込んだ。
慌てて笑顔を作る。


「ごめん、何でもない。
楽しい旅行だったみたいで良かったね」

「ここまではね、1泊めの話なの。
次の日は温泉街を歩いたんだけど……」


〜〜まだ続くの!?

ご丁寧に夜の営みまで曝け出されて、げんなりしてるっていうのに。
ていうか私の前では話をしないように気を付けるって、この前言ってませんでしたっけ?


「あーごめん、亜美」


膝の上に広げた、カフェのテイクアウトの包みを丸めると
ワザとらしく腕時計に目をやった。


「私、午後一で外出しなきゃいけないんだ。
今夜オープンする、新店舗のイベント準備があって」


嘘ではない。
もうすぐ1時になるし、そろそろデスクに戻らなきゃ。


「そっかー残念。
ここからが面白い話なのにな~」

「………」

「芹澤さんのお茶目な一面があってね。
すっごく可愛いの♡ 続きはまた来週話すね!」


お弁当をランチバッグにしまいながら、ベンチから立ち上がると
私を見上げて亜美がニコリと笑った。


「準備は大変だと思うけど、頑張ってね♡」

「……うん、ありがとう」

「沙月がディスプレイするショーウィンドウ、いつも素敵だから
あたし大好きだよ♪」



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