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吼える月
第6章 変幻


「違う、これは姫様なんだ。"光輝く者"ではないっ!!」



 受け入れがたい現実が、彼女の許容量を超えてしまい……白髪というよりは白銀色に髪色が変化したのだ。


 それは……リュカの髪の色のように。

 ……それとも、リュカのあの凶言による呪詛のせいか。


 凶夜に発光するその色は、不気味な月の赤色を吸収して、さらなる妖しい煌めきを放ち……見る者を惑わせるように揺らめいた。


 息を飲むほど美しく、同時に悍しい輝きの色――。


 魔性だと……衛兵達は魅惑されながらも怯えた。

 これは人外の……自分達の敵だと思い、刀を構える。



「刀を向けるなっ!! 黒陵の姫だぞ!?」



「これは魔性だ……」

「我々を破滅に導く、予言のに謳われていた存在だ」


 誰かが笛を吹いた。



「"光輝く者"が居たぞ!! こいつを殺せば、倭陵が救われる!!」 

「違うって言ってるだろ!!」



 ……ただ髪色が、銀色なだけで――


――本当に……この世は残酷すぎて、なにひとつ僕の思い通りには動かない。


 誰もの目は曇るのか。

 武官として心身を鍛え上げてきたはずの強者も、真偽を確かめずして、誰かにその罪を負わせて殺せば、それで救済されると信じてしまえるものか。


 ある意味、凶々しい予言の狂信者だ。

 正常な判断を曲げてしまうほどの、強すぎる力の犠牲者だ。


――"愛される"ことに慣れた偽善の姫の顔が、苦痛に歪む瞬間こそが……僕が幸せだと思える瞬間だ。


 愛される姫が憎まれる存在と成り果て、刀を向けられているこの現実。


 ……笑いたきゃ笑え、リュカ!!

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