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第32章 多難

「あそこに、あたしを連れて行ってくれる？」


　ユウナは、ワシに見えるように目的地を指さした。

　それを見て、わかったと言わんばかりに翼を動かすワシを見て、ユウナがにっこり笑って、また頭を撫でる。

　完全に腑抜けの状態だ。　


「違うよ、お姉さん。僕も。僕とお姉さんをあそこに連れていって貰いたいんだ。それがお兄さんを救うことになるから」


　するとワシは、そこで初めてサクの戦う姿を目にしたらしく、慌てて、早く乗れと言わんばかりに両翼をばさばさと動かした。



　そして――。



「サク～、あたしも頑張るわ～!!」


　ワシの背の上からユウナが叫ぶと、サクが空を見てよろけた。


「姫様なんで……」


「危ないっ、まったくなにを……」


　サクの危機を救ったシバも、同様に空を見る。


「シバ～、僕達先にあそこ見てなんとかするから、それまで気をつけてね～。無理してこなくていいからね～。ここからは頭脳戦、僕頑張るよ～」


「はああああ!?」


　珍しくシバが呆け、今度はサクが向けられた蠍の鋭い尾を叩き切って、シバを助けながら、さらに向けて怒鳴った。



「おいこら、ワシ！　俺を連れねぇで、なんで姫様とテオンを危険に連れる！」


　ぴぇぇぇぇ……。


「止まらないで、止まらないで！　これがサクを救うことになるのよ、一緒に頑張りましょう！　サクを救ってあげるのが、お友達よ！」


　ぴぇぇぇぇ～！


　熊鷹はユウナに励まされて、怒るサクの声も聞かずに、意気揚々と飛んでいく。


「……姫様とテオン残して、俺とシバをここから連れ出せばいいだろうが。これなら焦ってあっちに行かなきゃならなくなったじゃねぇかよ。……あいつ、焼き鳥決定」


　サクの不穏な声を聞かずして。