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吼える月
第36章 幻惑
  
 
「ただな、未来の祠官よ。血呪は強大な力になる分、己に返るものも甚だしい。即ち、自らの願いのためにひとを殺めた報いを、自身が受けねばならぬ。それは過酷な苦しみよ」

 青龍が言う。

「それが、してはならぬ〝呪い〟の代償なのだ」

 それがやけに重々しくテオンには聞こえた。

 倭陵にも禁呪と呼ばれる類いの呪いがある。その中でも特にしてはいけない強大で危険とされているのが、穢禍術と言われるものだ。

 それがどんなものなのか、具体的なことを記した書物はテオンは見たことはなかったが、穢禍術によって身を滅ぼした術者や、かけられた者達の悲惨な末期は、古い書物によく出てきたから、ひとにも劣る外道なものを捧げ物にしてするものだということは、テオンもなんとなくは理解が出来た。

 穢禍術が厄介なのは、術者をもが代償になることだ。
 そのため術者は、自己防衛策を徹底しなければならない。

 だからテオンはいつも思っていた。
 邪を浄化する神獣の力を身に纏えば、穢禍術が自分に跳ね返っても、相殺されてなんとかなるのではないかと。
 しかし聖なる神獣が、穢禍術を使う術者に力を貸すかは別の話のため、一番の問題はどう神獣を手懐けさせるかだろうと。

 テオンは知らない。
 まさか蒼陵を滅ぼしにかかった、銀に〝光り輝く者〟であるリュカという青年が、黒陵の祠官の心臓を贄にしてユウナに穢禍術をかけたとは。
 そしてリュカもまた、玄武の力を宿している事実を。

「わかってはいたけど……、まったく代わり映えのない景色だね」

 どこまでも続く道の前方と左右の奥は闇にぼかされ、テオン達がはっきりと見えるのは、両側に距離はあるが等間隔で並んでいると思われる、朱雀の模様を刻んだ石柱のみ。
 この広さは、まずは棺としては異常だ。

 そして鏡呪が棺に関連しているのなら、なにひとつ鏡たる輝硬石が見えないのが、テオンには不気味に思えた。

 鏡はないのだろうか。
 或いは、鏡にちなんだものが――。

「どうしたの、テオンちゃん。後ろむいて」

 テオンに引き摺られるように一同が一斉に後ろを向いた。
 後ろも前方と同じように、進んできた道の先が暗闇にぼけていて、両側の石柱が前後に、代わり映えなく連なっているようだ。
 
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