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吼える月
第36章 幻惑
 
 
「我、神獣青龍の名において、朱雀の結界よ、消えて本来の姿を見せよ!」

 シバの口から青龍の声が放たれると同時に、シバ自体も青い光を纏い、柱ごと赤い光を一刀両断にした。

 柱が崩れ落ちる轟音を背に、テオンの元にすとんと地面に着地したシバは、突如険しい顔をして、警戒に満ちた声音を出す。

「気をつけろ!!」

 なにがとは言わずとも、地響きと共に地震が襲う。

「うわあああああ、なになになに!?」
「きゃははははは!!」

 シバはテオンの手を取り、熊鷹はその足でユエを宙にぶら下げる。 

 地面が、動いている――。

 シバはそう感じた。
 そして地鳴りと共に落ち着いた時、場の様相は変わっていた。

 薄闇だったのが、打って変わって明るさを持つ。
 そう、下から熱と共に。

「下――うわああ、溶岩じゃないか!」

 慌てるテオンをしかと掴んだまま、シバは現われた場の姿に目を細める。

 かつての入り口はなく、テオンとシバが居る……今まで散々歩かされてきた道は、ぐるりと右に向けて大きな円を描く細道となった。
 そして円の内側には、さらに細い道が入り組んだ迷宮のようになっており、ユエ以外は細道ではない穴の部分に足を付けようとして、身体が傾いたようだ。

 つまり、どこまでも延々とひとつの円上を歩いていた状況であったようだが、入り口から歩いてきていつ円状の道に入ったのかに気づけなかった事実に、シバは舌打ちをした。

 そしてよく見ると、そうした円は右側にたくさん連なって行き来できるようになっており、シバの目が捕らえられる限りでは、遥か奥には出入り口がある。

 そして出入り口はやはり遠くに左側にもひとつ。
 円の左側は……円の内側のような迷路が一面に広がっていおり、左側の出入り口に行き着くためには、溶岩が見える巨大迷路を進まないといけない。
 
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