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吼える月
第36章 幻惑
 

 テオンはシバに下ろして貰いながら言った。

「え、そんな方法ある?」

 ユエにわかって自分にわからない方法とはなんだろうと、テオンは懸命に考え込むが、妙案が出てこない。

 するとユエが懐から、細長いものを掴んで言った。

「うん。ユエの浄化の笛!」

 それは横笛だった。

「サクちゃんとユウナちゃんの黒陵でも、テオンちゃんとシバちゃんがいる蒼陵でも吹いて、これで餓鬼の動きがとまったから、威力はばっちり。きゃははははは」

「そうか。うん、それは試してみる甲斐があるかも。ね、青龍……」

 テオンはシバに振り返り、ぎょっとした。
 シバがぽろぽろと涙を流していたからだ。

「ちょ、シバ? 青龍? どうしたのさ!」

 まるで幼子のようだ。
 それが自然で無垢に見えるのは、神獣の感情なのだろうとテオンは思う。

 やがてシバは、ユエに跪(ひざまず)くようにして言った。

「それは……昔懐かしき女神ジョウガの浄化の笛! そなたがジョウガしか吹けぬ笛を、吹くことができるのだとしたら、もしやそなたが――我らが主、ジョウガか?」

 シバ――青龍の顔は真剣だった。

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