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吼える月
第36章 幻惑
 

「あたしを残してひとりで逝かせない。今度はあたしが、サクを守るんだぁぁぁ!!」


 蛆にまみれたサクの眼窩から、涙がこぼれ落ちた。


「サク、あたしのところに戻ってきて! 負けないで!」


 涙は広がり、水面となる。
 そう、神獣玄武が司る、慈愛深き水に。


 枯れたものは潤い、崩れたものは肉となす。

 ただひとつ、姫の元に帰りたいという切なる願いを、水は叶える。


『姫、気をつけ……ばへぇぇぇぇ!』

「ラックーちゃん!? なによ、この黒い闇! どうして、どうしてイタ公ちゃんの刀が弾けない……きゃあああああ!?」


――ウルサイコノムスメカラ、クラオウカ。

 黒い闇がユウナの体を縛り上げ、牙がみっちりと生えた闇の割れ目が、恐怖に怯えるユウナに近づいた。

 ユウナの手から玄武刀が転げ落ちる。


「いやああああああ!!」


 それを拾ったのは――。


「姫様に触るな!!」


 目映い水色の光に、闇の動きが制された。



「サク!」

『小童!』



「消えろ。今はまだ、食われてやらねぇ。神獣玄武の名において」


 サクが構えた刀から水色の光が煌めき、サクを包み込む。


「失せろ」


 振り下ろされた刀。

 そこから迸る水色の光が、闇の中にいた輪郭を一瞬だけ露にさせ、そして霧散させた。


――ワレハキエヌ。……ナンジノナカニ……イル……。ケイヤクガハタサレルマデ、ナンジノナカニ……。

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