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吼える月
第37章 鏡呪
 

「なゼ、ナぜ……っ」


 惨状を晒した屍は、光に包まれて見えない。


「ナゼ、お前ガイる……!!」

「〝またね〟って言ったの、聞こえていなかった?」


 怯える声に、テオンはにっこりと笑う。


「僕が、青龍のまがい物を作るだけの策しか講じられないとでも? 悪いけどあれは、既にお兄さんに見破られている。同じヘマをするものか」


 意味がわからない、人面の闇は大きく揺らぐ。


「だからね、幻を二重にかけさせて貰ったよ、いちかばちかの賭けだったけれど。シバが自らの手で、幻の僕を殺せば、罪の意識でシバは目覚める。シバは誰よりも義理堅く、優しい男なのだから!」

「ワザと……殺メさせタト……」

「その通り。僕にも青龍の力を使えるようになったのが、嬉しい誤算だったけれど、結局お前は〝たかが〟人間の掌に転がされていただけだ。今ですら、シバを抑えることも出来ない。〝こんな程度〟だったんだよ」

 テオンがシバに向けた掌から、青の光がさらに勢いを増す。
 同時に笛の音も、激しい調べになってくる。
 

「うアアアああアアああアアアアあ!!」


 シバの目から涙がこぼれ落ちる。


「耐えるんだ、シバ!! 完全に、弾き出せ!!」


 それは激痛であり、テオンが生きていたという安堵でもあり。
 様々なシバの感情を乗せた絶叫が、場に響き渡る。

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