この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第8章 覚悟
 


「だがただ"移動しろ"だけでは、黒崙の民は簡単には黒崙を捨てはしない。移動時間だって時間がかかる。移動できたとしても、なにか困難なことがあるたびに、サクのせいだと怨恨が根強く残ってしまう。

それでは駄目だ。だからそれを解決するには、姫さんの切実なる訴えが必要だった。納得した移動を完了させねば、サクは民の個々の保身でいずれ売られる。黒崙の民のひとりひとりが、刺客となる。

……正直、お前達がそこまでの凄惨な体験をしていたとは、俺自身想像していなかった。リュカやリュカの傍にいた奴や餓鬼を相手に、よく無事に姫さんを護れたな、サク」


 息子を褒めた後、その顔は怪訝なものへと変わった。


「だがお前――…そこまで強かったか?」


 事実を看破されそうで、サクの心臓は跳ね上がった。


「……俺は……」


 すべてを見透かすような鋭い視線を受け、サクはどもるようにして口を閉ざしたまま、その視線を外すように斜め下を向いた。

 僅かハンの目が細められる。


「……まぁ今はいい。サク、旅立つ支度をしろ。黒陵はお前達にとって鬼門となる。蒼陵のジウ殿を頼れ、俺が手紙を書くから。

まあ玄武の祠官が死んだことで、倭陵の結界が崩れた事実は変わらない。あっちもこっちも大騒ぎ状態かもしれんが。ジウ殿は、お前も知っての通りに情に厚い。力になってくれるだろう。……船はもう出た後だな。明日の早朝、急いでここを出ろ」

「……っ」

「サク?」


 苦しそうに唇を噛むサクの仕草を訝しげに見ながら、ハンはサクの耳飾りがひとつしかないことに気づいた。


 ハンは眉間に皺を寄せるようにして一度目を瞑ると、サラに向いた。


「……サラ。姫さんを風呂に入れて、髪を洗ってやれ。それから晩餐の宴を。精のつくものをたっぷりな」

「勿論よ! さあ姫様……」


「あ、あのね。ハン、話があるの。あたし……」


「姫さん、悪い。後にしてくれ。ちょっとサクと至急話がある」



 なにか言いたげだったユウナは、口をつぐみ……サクはこくりと唾を飲み込んだ。

 あまりにサクを見つめるハンの眼差しが、鋭利なものであったから。

/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ