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吼える月
第10章 脆弱
 

 ユマの涙ながらの訴えに、思わずサクの足が止った。


 今、ユマはなんと言った?


――姫様は色狂いして男を誘いまくるから、だからなにをしてもいいんだって、沢山の兵士達に……無理矢理っ!!


 "色狂い"



 確かに、あの男装した謎の女は言っていた。



――目覚めれば呪詛により……姫はまた狂う。


 "また狂う"、と。

 その狂いとは、色狂いだというのか。


 自分から離れていた間に、別の男達に抱かれていたというのか。


 想像しただけでずきずきと胸が痛み、その男達を殺してやりたい気分になる。それをなんとか押さえ込むように、サクは深呼吸をした。


 あの謎の女の言葉を信じるのなら、ユウナが狂っていたのは事実。

 そして彼女が庇護し、街の外に居たサラが実際ユウナを見つけてきたのだから、ユウナが街の外に出ていたのは事実。


 そして――。


「――っ」


 サクは、ユマのガクガクとした両足の付け根から、白濁と真紅が混ざり合った汚濁液が、太腿を伝って伝い落ちている様を見た。


 無残にも……凶悪な赤い月の雫の如く、ユマの純潔は穢れた――。


 ……ユマが、他の男に抱かれたのは事実だ。

 あの無残な様子から、輪姦もまた……事実なのかもしれない。


 そして――。


「サク――っ、貴方の姫様は貴方の知る姫様ではないわ!! 騙されないで、私見たの、聞いたの――っ!!」


 ユマの涙ながらの訴えは。



「あのひと、私のフリをしてタイラに抱かれていたのっ!! そしてふたりで街を出ようとしていたのよ、サクを置いて――っ!! 貴方の"監視"が嫌だからと」



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