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吼える月
第1章 狂宴
 


 金色の男は、剛直な楔を深く強く少女に打ち付け、狭道の深層を抉るように何度も突き上げる。

 その痛みと震動を少女の喉奥から感じた銀色の男は……手にしていた、真紅の雫を刃先から滴らせる小剣を床に落とし、苦悶に眉根を寄せ……僅かに呻いた声を漏らした。



 そして――。

 音のない狂宴を切り裂く、二匹の獣じみた咆哮。

 
 少女の目から一筋の涙が頬に伝い落ちた時、……前から後から、白濁の欲の残滓が彼女を汚辱し、彼女の体は真紅の海の中に崩れ落ちた。


 そして、彼女は冷たくなった骸に手を伸ばし、抱きしめながら……僅かにぎこちなく微笑む。



「大好きなお父様……。私も、すぐに参ります……」



 床に落ちていた刃物を掴んだ彼女の手を、足で踏みつけたのは、銀の男。



「死ねぬ呪いをかけてやる。

苦しみ続けろ――永遠に」



 そして少女の髪を鷲掴み、呪詛をかけた時――



「ああああああああ――っ!!」



 すべてを黙って見届けることを強いられていた、漆黒色の髪を持つ男が、呪縛を破って大きく吼えた。


 左耳からぶら下がった白い牙が、青白く発光する。

 同時にその光は刃となって、銀色の男の背中を切り裂いた。


 その肌に刻まれていたのは烙印――。



「姫様ああああああああ!!」



 激情に猛る漆黒の男の目からは、真紅の涙が流れていた。



 
 倭陵暦498年。

 最強の防護を誇っていた黒陵、堕つ――。


 
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