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吼える月
第14章 切望
 

「サラ――っ、今、壁が破れて……。鉄門も危ない。早く、早く裏門を。もう少しなんだ、もう少し――っ」




 ひとりにはさせない。


 ハンの隣にはいつでも自分がいるんだ。


「サラ!?」


 サラは駆けた。



「サカキ、後は頼むわっ」

「サラ、そっちは危ない、サラ、サラっ!!」



 あのひとは自分達を護るために、危険な場所でひとりで戦っている。

 だったらあのひとを護ってくれるのは?


 玄武は愛しい息子の傍にある。


 だったら、今まで玄武が護っていたあのひとはどうなるの?


 あのひとを……ひとりで逝かせはしない!!




 サラは地面に突き刺さっていた大きな薙刀を引き抜き、行く手を遮る餓鬼を気合いのかけ声とともに薙ぎ払った。


 かつて、朱雀の武神将として培ってきた戦闘の勘を取り戻すために、サラは天を振り仰いで、声を上げた。


 その顔つきは、いつもの温和なものではなく、険しい戦鬼の形相だった。


 もしも――。


 自分が武神将であった過去に意味があるのだとしたら。


 それは、ハンと出会うために。

 ハンとの間に、サクというハンの血を受け継ぐ強い息子を産むために。


 そして――。



 いつでも、生きるときも死ぬ時も、常にハンの隣にあるために。



 ハンを守れるのは、自分だけしかいない。

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