この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第14章 切望
 

 ハンは溜まらないというように目を細めて、大刀を空高く放り上げると、サラを片手で抱く。


「何度惚れ……させるんだよ……。俺だって……お前の傍で死にてぇよ」


 そして――、ハンは片耳についている耳飾りを取った。


「街の民は?」

「街の中に餓鬼が発生し、大方はその犠牲になった。残りは、サカキが開けた裏門から避難させているはずよ」

「街の中にも…か」


 大刀が落ちてくる。


「畜生、これほど大量の餓鬼が出てくるとは。……これだけ膨れあがっている餓鬼を消す力は、今の俺にはねぇ。俺に出来るのは……せいぜいこいつらを惹き付け、皆が避難する時間を僅か作ることぐらいだ。今ある玄武の力は、その加護はすぐに尽き、餓鬼を集わせた反動を受ける。

この先、俺達に待ち受けているのは死しかねぇ。その死出の旅に……お前も来てくれるか?」


 サラは泣きながら微笑んだ。


「サクを逃がした時から覚悟はついてる。

貴方とならば、どこまでも。喜んで――」



 ハンの目から涙が零れる。


「不甲斐ねぇ……夫でごめんな」

「不甲斐ない……妻でごめんなさい」


「それでも俺達は……」

「ええ、永遠に一緒よ」



 そしてハンは叫んだ。



「玄武の武神将、ハン=シェンウの名において……今ここに、玄武の力を解放す。

……"大旋輪"」


 大刀が宙にぴたりと止まり、旋回する。


 つむじ風が生まれ、天を貫くような竜巻が幾つも生じる。

 地面が激しく揺れた。


 そこにサラが長い黒髪を靡かせて、足をふらつかせている餓鬼と警備兵に切り込む。そんなサラに襲いかかる敵をハンが拳で叩きつける。


 餓鬼は消し飛び、警備兵も風圧に消えゆく。

 ハンが作った竜巻は街を護る壁となり、順調に敵を殲滅していっているかのように見えた。


 だが、餓鬼は膨れあがり、外からも街の内からも……まるでハンの力に誘い出されるように集まる。予想以上の多さを見せる餓鬼を前に、ハンの力の勢いは次第に衰え――。


「――がっ」


 突如ハンが膝をついて、口から血を零した。


「ハン!?」

「サラ、気をつけろ。――後ろから、なにかが……来る」


 カツン、カツン……。


 靴音を響かせ……遠方が光った。

 ……妖しげな、金色に。


 サラは、本能的な恐怖を感じた。

 
/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ