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吼える月
第15章 手紙
 



「目的は?」



 低い声を発し、がらりと……サクの様子が変わり、威嚇するような警戒に満ちた面差しへと変わる。


「俺や姫様を捕獲するというのなら、手段を選ばねぇぞ、俺は」


 サクは、サラの刀を長剣にして、ふたりに向ける。


 一触即発、そんな緊張感漂う場の空気を壊したのは少女の笑い声。


「きゃははははは。ねぇサクちゃん。港に行くまでのここの山道、餓鬼が沢山いるんだよ。玄武の力がないサクちゃんは、どう餓鬼を退治するの?」


 この話しぶりは、ただの天衣無縫な少女ではない。

 大人びて悠然としたような面差しをしながら、少女は笛を見せる。


「鎮魂曲……。ユウナちゃんが踊れる鎮魂舞を支える笛の旋律、これでユエが餓鬼を惹き付けてあげる」

「お主に選択肢はない。餓鬼は神獣の力で消えるもの。今のお前の体にある力では、餓鬼の群れを突破はできまい」

「親父は俺に渡してくれると言ったんだ。だからもう少しで……」


 その時、鳴り響いたのは……出航を告げる汽笛。


「は!? 嘘だろ……ここまで来て、船が出ちまう!?」

「サク……どうしよう!!」



「ひとつ、方法がある」

「それを教えてあげに来たんだよ~」


 ふたりは意味ありげに笑った。


「方法?」


「このお馬さんを使って? よいしょ……」


 女と少女は馬から下りた。


「まさか馬で、餓鬼がいる道を下れと? 山を下る時間は……」



「だから」


 少女は指さした。

 崖……それも極度な断崖の絶壁を――。



「下は港。あそこから駆け下りるしか時間的に方法がないよ?」


 少女の顔に、意地悪げな表情が浮かんだ。

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