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吼える月
第15章 手紙
 



最後に――。


旅立つお前に餞として、今まで黙っていたことを教えてやる。



1年前。

姫さんが伴侶にリュカを選び、お前が飛び出した後、俺は姫さんに聞いた。


「姫さんは、相手はリュカがいいと即答しなかった。迷う要素があったのに、サクを選ばなかった理由はなんだ?」

「サクは、姫さんにとっては"護衛"以外のなにものでもないのか?」


 姫さんはこう答えた。



「……お父様とお母様は、愛し合って結婚されたというのに……会えない時間が多かった。時には何ヶ月も会っていない時もあった。夫婦なのに。

病弱なお母様は床に伏せながら、お父様はお仕事なんだから仕方がないと悲しそうに微笑んでいた。お母様の死に目にも、お父様は間に合わなかった……。ずっとお母様はお父様の名を呼んでいたのに……」


両親の……夫婦の在り方に憂える姫さんが、幸せになろうとした結果の夫選びの基準はここだ。


お前は選ばれなかったわけではない。

選ばれなかったのは、むしろリュカの方だ。


ここから先、姫さんがなんと言ったのかはお前が考えろ。

わからなかったら、姫さんに聞いてもいい。


サク、お前の未来は棄てたもんじゃねぇぞ。


生きろ。


生きていれば必ず、お前に光が差すから――。






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