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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~ 
 

「サクの人生を縛っても、それでもあたしはサクが欲しい。サクを必要としている。……サクがあたしと儀式をして成功したとして、後で後悔しないように、あたしもあたしなりにできることを頑張ってみようと思う。

まだまだ、ただ…"目標"を口走っただけの無力な小娘だけれど、今のあたしにはなにももっていないけれど……それでも、あたしの武神将になって貰えますか?」




 "あたしの武神将"



「あたしを、選んで貰えますか?」



 ユウナのものに――。

 


「――勿論。そういってるでしょうが、初めから俺は。それが俺の願いだって」



 サクは泣きそうになるのを堪えて、ユウナを抱きしめた。



「差し上げますよ、俺のすべて。だから存分に、味わって下さい。そうできるのは、姫様だけですから」

「サク……、ありが…とうっ」



 まさか、こんな形で了承してくれるとは思わなかった。

 ここまでして、求めてくれるとは思わなかった。


 わかっている。


 必要としてくれたのは、武神将としての自分だと言うこと。
 
 それでもいいからと、懇願したのは自分――。


 それでも。

 それでも――。



 "あたしの武神将"



 離れることのない関係を、

 自分はユウナだけのものだということを、


 承知してくれたことは至上の喜悦。


 これで自分は、なにがあってもユウナから離れることはなく。

 命すらユウナのものになれるという悦びで、心が震えて溜まらない。


 ああ――。
 
 ユウナが愛おしすぎて、想いが零れそうだ。

 口づけて、このまま抱いてしまいたいほどに。


 愛おしい。

 愛おしい。


 唯一無二のこの主が、この姫が。


 愛おしすぎてたまらない――。



「……ああ、くそっ!! 姫様が嫁にきてくれるみたいに、嬉しすぎるじゃねぇですか」


 震えているのは声音なのか、心なのか……それすらサク自身、わからぬほどに。

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