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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~ 
 



「サクは……やっぱり髪の短い女の子は、気に入らないんだ」


 人ごとには思えないその台詞。

 それにユウナに対しての、挑発的なもののように感じてしまった。



「髪の短い女の子は、嫁にしたくないほど……女以下の扱いにしちゃうんだ? メス小猿……ねぇ」



 カチン。



「はい? 姫様……なに怒って……」


「頑張れ、女の子!! サクになんて負けるんじゃないわよ!! 女は長い髪だけが命でもないし、嫁に行くことだけが幸せじゃないんだからっ!!」


 突然、ユウナが大声を上げて捕縛した少女を激励を始めた。



「姫様、一体誰を応援してんですか!! あのガキは、姫様を……っ」



「おおっ!? あんた、話わかるねっ!! ただ顔だけがいいお嬢じゃないとみた!! だったらお願い、あたいをここから離してよ」

「いいわよっ!!」



「姫様っ!?」



「サク!! その手首の縄、解くわよ」

「な、なにを…そしたら、あのチビ……」

「解けたわよっ!! って、あら」



「ぎゃあああああああ!!」



 少女が高地点から落下を始めた。



「だから言ったこっちゃない……」


「サク、あの子を助けるのよっ!! いえ、いいわ。あたしが、この両手で受け止めるわ。髪が短いからって、なめるんじゃないわよっ!!」


 繋いでいた手を解いて両手を拡げて真下に立ったユウナに、サクは唸るようにして声を上げて動いた。


「ああ、もうっ!! なんで姫様を危険な目に合わせたガキを、姫様に怒られながら助けねぇといけないんだよ……っ」


 ぶつぶついいながらサクは柱を駆け上り、落ちる少女の服をむんずと掴んで、宙で一回転をしながら着地した。

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