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吼える月
第16章 船上 ~第2部 青龍の章~ 
 
「猿、お嬢の飼い猿じゃなくて、お嬢の旦那!?」

「だ、だだだ旦那、俺が!?」


 ふたりの目線が、慌ててユウナに注がれる。


「い、いや……そ、その……」


 ユウナの顔がぼっと赤くなった。


「え、お姉さん違うの? だってサクって言うんでしょう、あんた」

「俺はサクだけど……」

「サクは旦那だって言ってたよね?」


 皆の視線がユウナに突き刺さる。

 その鋭さが切実なまでに顕著なのが、サクだ。


「あ、あたしは……」


「お、俺……だ、だだだ旦那? 姫様……俺の、よよよ……」

「男ならしゃんときっぱり物を言え、この猿!!」

「いってぇな、メス小猿!!」


「メス小猿……」


 真っ赤になっていたユウナの顔から、熱と赤さがすっと引く。


「この者はあたしの旦那ではなく、この先もそうなることはないでしょう」


「――っ!!!?」



「え、そうなの……って、お兄さん…? ねぇ、大丈夫? 凄い顔して固まっているけど……」

「なんだか皹はいってるよね。ぱりんと壊れそう」


 子供ふたりがサクを指先でつんつんと突いていた時、



「撤収――っ!!」



 威勢のいい声が響いた。

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