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吼える月
第17章 船上2
 

「……もっと舐めたい……サクの蜂蜜……」


 どくんっ。

 サクのオスの部分が疼く。


「美味しいの……。美味しくて……身体が熱くなる……」


 ユウナが掠れた声で、サクに助けを求めた。


「身体が……じんじんして疼くの…。それは、サクの蜂蜜で少し落ち着くの……。だけどまた身体が熱くなって、じんじんして……。ねぇ、あたしの身体、どうなっちゃったの?」


「それは……」


 ユウナは欲情している。


「それは姫様が……俺を……」


 その瞳の色は、黒の色。

 呪詛の発作時のような紫ではない。


 発作でもないのに、自分に――?



 潮騒。

 カモメの鳴き声。


 清涼感ある爽やかな潮風が吹くのに、とろりとした…粘りを秘めた劣情の熱は引かない。


 おかしい。

 環境が情欲を煽り立てることもないはずなのに。



「サク……っ」

「………」

「あたし……病気……?」

「………」

「疼きが止らないの……っ」



 サクの目に映るのは、蜂蜜に濡れて光るユウナの唇。

 口端から零れた蜜は筋を作って垂れていて、どうみてもユウナはふわふわとしたところを彷徨っているような、不安定な状態だった。


 それは情事の最中のような――。
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