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吼える月
第18章 荒波
  


「サク、これはあたしの心の一部よ。サクを護りたいという心と、神獣とジョウガの力が合わさって、無敵になるわ。だから駄目かな、これを……」


 その輝かしい笑顔を眩しそうに見ていたサクは、静かに視線を下に落とし、その声音を震撼させた。


「ねぇ姫様。まさかこれを買うために……髪を?」

「ん……お金の代わりとなるのなら、安いものよ。ねぇサク。嵌めてみて?」


 サクはおずおずと、ユウナから受け取った腕輪をした。


 武人らしい逞しい右手首に輝く、繊細な煌めき。

 それはサクの身体に絡んだユウナのようで。


 愛おしい――。


 込み上げる想いを押し殺しながら、サクの顔が切なく歪んだ。


「……これがいい」

「……え?」


「これ以上、強い姫様の心を感じるものはねぇから。儀式の時、これを姫様の代わりとして貰います」 

「嬉しい……って、サク!?」


 ユウナが声を変えたのは、サクがユウナの身体を反転させて、正面から思いきり強く抱擁したからだった。


「ありがとう。俺……、死んでも大事にする」


 感極まったような震えた声を耳にしたユウナは、くすりと笑う。


「ふふふ、気に入ってくれてよかった。だけど死んだら嫌よ?」

「……死ぬまで、この腕輪と姫様大事にする」

「……っ」


 それはまるで求婚のよう。


「女神や神獣の力より、俺の力で姫様守る」


 ユウナの胸の奥が、とくりと音をたてて……熱いものが零れた。


「姫様……、俺に生涯守られてて下さい」


 羞恥とは違う熱さに、ユウナの肌は汗ばんでいく。

 サクの体温と溶け合うかのように――。

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