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吼える月
第21章 信愛
 

 どこまで愛せば、落ち着けるのだろう。

 ユウナを強く求め続けて、体を重ね合える僥倖にあずかれたというのに、それでも満足せず、さらなる愛を渇望する。

 深く愛せば愛すほど、ユウナとの温度差に不安になって。


 武神将という形式に頼っても、それでもユウナの心に男の影を感じ取れば、こんなに脆く自分は崩れる。1年前の苦しみをまた味わうかもしれないという臆病な不安が、顔を覗かせる。


 どんなに体を鍛えても、心は……強くならない。

 ただ、強くあろうとしているだけ。頑張ろうとしているだけ。

 ……現在は、1年前とは違うのだと。


 故意に目をそむけた現実の一部はこんな場面で露見し、そしてこんなに狭量な自分は、独占欲という厄介な痛みを新たにもてあます。

 もっともっと特別に、もっともっと愛されたいと、今まで抑圧してきたはずの欲が渦巻いて勢いを増し、どうしていいのかわからなくなる。


 ただ、ユウナを愛しているだけなのに。

 ただ、ユウナに愛されたいだけなのに。



「はぁ……っ、ん、あぁん……っ」


 愛しているから、愛を分かちあうために抱きたい。

 抱いたからこそ、不安になる。


 体と心が共に繋ぎあっていなかったからこそ。



 不安を、叫び出したい。

 それで解決にならないのはわかっていながらも。


 "今のお前の中には、誰がいる?"

 "その女の顔を、本当は誰に見せたいんだ?"


 そして。



 "俺だけを愛せ"



 自らの愛を押しつけないと、ユウナに誓ったその言葉が、喉まででかかって、苦しくてたまらなかった。


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