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吼える月
第21章 信愛
 

 サクの脳裏に見える理性と本能の狭間、危険を知らせる色つきの閃光が点滅する。



 オスの本能に立ち返り、荒々しく組み敷いて。培ってきたこの愛をすべて、欲に放出して楽になりたい――。



 光輝く銀色が、青色が、脳裏にちらつく色鮮やかな閃光が。

 乱れるユウナ欲しさに、サクの理性を翳らせた。


 愛するゆえの破壊衝動。

 愛されないゆえの苛立ち。


 だが、ぎりぎりのところでの躊躇が、サクの動きを押えていた。

 そんな時だ。


「ふさふさ……っ、気持ちいい……っ」


 サクの髪を弄るユウナが、うっとりとした声を響かせた。

 それは快楽を感じている女の艶めいた声――。


 途端サクの"男"は煽られ、自制の均衡が崩れていく。



「んんっ……ねぇ、姫様。ふさふさな奴に……会いたいですか?」



 長く伸ばした舌で、ユウナを乱しながら、熱い息の最中で聞く。


「ん……ぁあっ、ふさふさ、んぅ……っ、会いたい……っ」


 サクの顔に浮かび始めたのは、負に染まった"覚悟"。


 コレハユウナガノゾンダコト。ダカラオレハ……。


「ふさふさイタチに……会わせてあげます。今度はずっと」



 "真似事"で可能にした、刹那的なものではなく。

 ユウナの胎内に、残滓ではない確固たる自分を刻み込めば。

 何度も何度も奥深くまで、刻み込めば――。


 男としての征服欲が強さを増し、サクの顔に暗い翳りが落ちた。


「姫様……っ」


 そしてユウナの足を押し開こうとした時――。



「サク……どうして泣いているの?」


 蕩けた表情ながら、ユウナは心配気な顔で、サクの目尻を指で拭いながら尋ねた。

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