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吼える月
第21章 信愛

「じゃあこれくらい?」

「……まだ足りない」

「どれくらいですか、姫様が満足できるのは」


「サクが満足できるくらい」

「……そうきましたか。俺に合わせたら、姫様壊れますよ」

「いいもの」

「ばきばきって折れてしまいますが、いいんですね? 姫様の腰、片手で掴めるほど細くなってしまいますが」

「……っ!?」

「では失礼して」

「ちょ…待って待って、ぎゅっはもういい。いいからっ」

「いいから……?」



「サクの身体に触りたい」




「俺に触られるのではなく?」


「ん……。触られたい以上に、あたしの武神将に触りたい」



 それは高まる身体の官能欲より、ユウナの心の欲が勝った瞬間だった。

 サクの強さと匂いに包まれたら、どうしてもサクに触れたくなったのだ。儀式を通して、強く繋がった男を。


「ふふ……いいですよ、思う存分どうぞ」


 サクはユウナから身体を離すと、両手を大きく拡げたまま、嬉しそうに笑った。その顔はいつものサクなのに、耳に揺れるものがないだけで、別人のように思ってしまう。

 昔から見慣れてきた姿を急成長し、さらに身体を疼かせる性的魅力をも兼ね添えたサク――。


 そのサクが情欲に蕩けたような顔を見せるだけで、ユウナの胸はきゅうきゅう音をたてた。


 身体が熱い。

 だけどそれ以上に心も熱い。

 
「姫様……?」



 ユウナはサクの前衣を開き、露わになった逞しい胸のその肌に、口をつけて、悩ましいため息をひとつ零した。

 
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