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吼える月
第24章 残像
「とにかく君の立場は特殊なんだ。君が生きている限りは、利用価値がある。ここは手を組まないか。奴がこの国に現れて"行動"を起こす前に、私と一丸になって闘ってみないじゃないか。
ひとりの武神将の狂行封じより、国の行く末がかかった……そんな大義に決起したらどうだ、なあ、青龍の武神将の隠し子よ」
どこまで、スンユは知っているのか。
徹底的に秘匿されてきたシバの出生の秘密すら知り得るとは。
「私には大義を後押しできる肩書きがある。だから君は、私を助けたのだろう? ……さあ、どちらがどちらを利用した方がいいのかな、私達の国にとって」
私怨ではなく国のためなら、ジウよりもいずれ来たるリュカを相手にせよと、規模を拡げて勢力をものにとようとするスンユ。
飲まれるか得策か。飲み込むのが得策か。
すべての秘密を握るスンユは、諸刃の剣――。
「さあ、どうする? 黒陵を滅ぼした男を野放しにして、蒼陵が滅ぶのを黙認するのか、倭陵の民よ」
国のためだと大義名分を口にしながら、リュカと酷似した歪んだ笑みが黒すぎて、ユウナはぶるりと身震いをしながら、この男が唯一情報として知り得ぬだろう……さっき自覚したばかりのサクへの恋心は、この男には隠匿していようと固く心に誓った。
どう思い返しても、神獣に類するものに対するあの殺気は、本物のように思えたのだ。
サク――。
早く会ってこの想いを伝えたいのに。
ユウナ達が必死に介抱したのは、一筋縄にいかない厄介な存在だったらしい――。